では扉が全て開いている場合とそうでない場合で避難時間はどの程度違うのでしょうか?
それを調べるのがシミュレーションの役割です.
扉が1枚しか開いていない場合と扉が4枚全てが開いている場合を
シミュレーションした結果が下の図となります.
丸は人を表していて,流れる箇所が緑色,混雑している箇所が赤色となります.
一目瞭然で全ての扉が開いている方が速く避難できることが分かります.
扉が全部開いていると5分39秒で避難が完了するのに対して,
扉が1枚しか開いていないと11分31秒かかります.倍以上の時間が必要です.
この結果から扉を開ける誘導員が必要そうなことが分かります.
ただ,上の例では誤った経路を選択した人が出ました.
扉を開ける人と経路を誤らないように誘導する人とではどちらが大事でしょうか?
もちろん,どちらも大事ですが,誘導員の人数は限られています.
どちらかにしか人を割り当てられない時,どちらを優先すればいいでしょうか?
そういった分析もシミュレーションが得意です.
扉を1枚開放と4枚開放の2通り,避難経路が正しい場合と誤った場合の2通り,
参加者が1300人(避難訓練時)と1800人(満員)の2通りの組み合わせで
2×2×2 = 8通りのシミュレーションをした結果が下の図です.
横軸が時刻,縦軸が避難完了の人数です.
満員の時の4つのグラフを見比べてみましょう.
扉が4枚開いていれば例え経路を誤っても避難時間はほとんど変わりません(青と紫).
扉が1枚の場合は4枚の場合に比べて避難時間が大きく延びて(青紫と赤緑),
扉が1枚の場合は経路を誤るともっと時間がかかるということになります(赤と緑).
ここから扉を開けることは非常に大事なことが分かります.
では避難の際にどのようなことに注意しなければいけないのでしょうか?
それを調べるためには網羅的なシミュレーションが必要です.
条件の掛け算でシミュレーションの計算量は増えていきます.
上の実験のように2つの選択肢の条件が3通りあれば 2×2×2 = 8通り.
2つの選択肢の条件が10通りあれば 2×2×2×2×2×2×2×2×2×2 = 1024通りです.
指数的に計算数は増えていき,30通りあれば…なんと約10億通りにもなります.
1回のシミュレーション計算に10秒が必要だとしたら10億通りで100億秒…
つまり320年の計算時間が必要になります.ここで必要になるのがスーパーコンピュータです.
我々はスーパーコンピュータを150日動作させ,
およそ700万通りの避難方法をシミュレーションで検証しました.
特定の階段を利用すると避難時間が長くなることなどが分かってきています.
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