Last Danceのリングを展示会で初めて見たとき、なんだか無性に楽しい気持ちになった。カップケーキみたいなギザギザの台に小高く鎮座する、ウソのように真っ青な色石。ぷっくりしてるのにてっぺんだけツンと尖っていて、「どうよ、アタシ!」と言わんばかりにいばっている。なかなかえらそうなんだけど、澄んだ色に性格のよさが表れている感じがして愛おしい。一見ポップなのにちゃんと気品も兼ね備えていて、見れば見るほど面白みのあるリングだなと思った。
一点の濁りもない鮮烈な青に吸い込まれそう。というかむしろ全身吸い込まれて浄化されたい。これってガラスなんじゃないの? と疑ってしまうほど透明度の高いこの石は、ブルークオーツと呼ばれる人造石。人の手によって生み出された石でありながら、天然の水晶と同じ組成構造を持つ。人工とはいえここまでムラなく均一な発色を実現するのは至難のわざだそうで、これこそまさに努力の結晶。色石の「Matt(マット)化」とでも言いましょうか、出自はどうであれ、底知れぬパワーを感じるのは私だけではないはず。
美しすぎる色もさることながら、「ジュエリーとはこうあるべき」みたいな固定観念を華麗に打ち砕く、型にはまらない発想にも心惹かれた。キラキラと装飾するのではなく、ミニマルに、シルエットを誇張させて。その佇まいはどことなくバレンシアガ的なアティチュードを思わせる。あのカクカクした幅広のテーラードジャケットや量感たっぷりのブラックドレスにこのリングを合わせたら、いったいどんなケミストリーが起こるのだろう。
話は変わるが、昔友人と付き合っていた人が、ちょうどこのリングの石みたいな形の青いとんがりニット帽をよくかぶっていて、私はひそかに彼のことをキスチョコと呼んでいたんだった。当時キスチョコはラッパーとして精力的に活動していて、大晦日のカウントダウンイベントでもクールなラップを披露しながら、そのかわいらしいキスチョコみたいな帽子をかぶっていたっけ。Last Danceのリングを見ていたら、思いがけずめちゃめちゃ懐かしい人物と脳内で再会してしまった。もう2021年が終わるっていうのに、私の頭の中はいまだに20年前を行ったり来たりしている。